第一幕 闇の殺人鬼

——ガシャ……コツ……コツ……コツ……。

夜の都立高校の校内を歩く黒い影。その先では部屋のドアや廊下に面した窓から蛍光灯の灯りが漏れている。

——パチッという音とともに、部屋が暗闇に満ちた。

「——?」

机に向かっていたスーツ姿の男は周囲を見渡すが、急に視界を奪われたせいか何も捉える事ができない。手探りで立ち上がり、摺り足で記憶にある電気の場所まで行く頃には、多少なりとも目が慣れてきたのか人差し指でスイッチを押した。

電気をつけた男は、自分のそれとは違う影が自分を覆い隠していることに気づき、ゆっくりと背後を振り返った。

黒く薄く、コウモリに似た翼。人間味を帯びない赤黒い瞳。口内に収まりきらないのか、僅かにのぞく犬歯の長さ。その姿は絵に描いたような吸血鬼そのもの。

「う……あ…………」

男は目を見開き、唇を震わせながら、やがてずるずると壁に背中を擦り付けるように座り込んで、絞り出すように叫んだ。

悲鳴を聞きつけて駆けつけた警備員が廊下に動く二人の人影にライトをあてて、

「だっ、誰だそこにいるのは」

と、言い、一歩二歩と近づくと、その人影の一人が後ろを振り向いた。

「ぅわあぁぁ!」

——ドサッ——と、警備員が倒れると、吸血鬼は目の前に来て腕を振り上げて警備員の腕を思い切り引っかいた。

「ぎゃぁぁぁーっ!」