第二幕 恐怖のウワサ

朝、学校へ向かう(かえで)砂亜羅(さあら)は、何やら学校がいつもより騒がしい事に気付き、不思議に思いながら教室へ入って行った。

「おはよう。風上(ふうじょう)

親友の風上飛鳥(あすか)に言った。

すると飛鳥が、

「あ、おはよう砂亜羅ちゃん。大変よ!」

と、慌てた様子で駆け寄ってきた。

わけもわからず砂亜羅は、「どうしたの?」

と、目をパチクリさせながら飛鳥に聞く。

「実はね。昨日、事務の先生と警備の人が吸血鬼に襲われたんだって!」

「え? 吸血鬼?」

聞き慣れない単語に砂亜羅は驚いた。

「そうなの。事務の先生はダメだったらしいけど、警備の人が入院したって」

「え! うそぉ! 怖ーいっ!」

「でしょ? 怖いよねぇ。私なんか聞いた時ぞっとしちゃってさぁ」

と、恐怖を語っている。

「でもただの噂でしょ?」

まだ信じられない砂亜羅が言った。

「うん。でもやっぱり本当なら怖いよ」

飛鳥もまだあまり信じてはいなかった。

クラスの男子の一人が教室へ駆け込んできた。

「おい! 大変だぞ。あの吸血鬼、最後に“我コノ地キニイリシ”って言ったんだって!」

うるさいくらいの声、誰もがその声を聞いた。

「えー! うそぉ。ヤダー、怖ーい!」

クラスの女子が見せて当然の反応だった。砂亜羅もその中の一人で、

「どうしよう。本当に吸血鬼だったんだ……」

と、とまどいを見せていた。

飛鳥は、「やだなぁ。もう一人で寝れないよぉ」

と、怖がる気持ちを見せている。

たった一つの言葉が、学校中を恐怖へと引きずり込んでいくようであった。

その日の夜、夕食を食べに砂亜羅が二階から降りてきた。

砂亜羅の家は四人家族。父の貴史(たかし)に母の綾子(あやこ)、兄の(つよし)砂亜羅である。砂亜羅は、家族に向かって、「今日ね。学校で——」

と、言いかけた時、綾子が、

「あ、そうそう。学校といえば吸血鬼ですって?」

と、何も知らない様子で聞いた。

「ちょっと、私が話し始めようとしてるのに遮らないでよ」

砂亜羅は、いかにも私の話題かの様に言う。

剛は、「何、吸血鬼ってあの本とかにでてくる奴か?」

と、まるっきりお遊び気分。

「嘘なんかじゃないってば!」

「こらこら、静かにしなさい」

貴史が、砂亜羅に言った。

「だってー、事務の先生が一人死んじゃってるんだよ! 笑い話になんかできないよ」

砂亜羅が言うと、綾子が「本当にお亡くなりになったの?」

「そうだよ。もう、大変だったんだから」

砂亜羅はそう言うと、ちゃくちゃくと夕飯を済ませていった。

夜も深まり、皆が眠りにつく頃、剛が砂亜羅の部屋の方で物音がしているのに気付いて目を覚ました。

砂亜羅の奴、何やってんだ?」

剛が寝ぼけた声でつぶやいた。しかし、あまり気にせずにまた眠ってしまった。