第六幕 親友の気持ち

一緒に家を出た三人は、真剣な顔つきで歩いていた。

「とりあえず、砂亜羅の様子から探ってみるか?」

「でも、それでまた人が死んじゃったらどうするの?」

話していると、いつの間にかいつもの待ち合わせ場所まで来ていた。

砂亜羅が言うまで、ばれるとよくないな。この話はまた夜にしよう」

「そうだな。先に行けよ、砂亜羅

剛の言葉に砂亜羅も頷き、飛鳥のところに行った。

「おはよう。砂亜羅ちゃん」

気付いた飛鳥が手を振った。

「お、おはよう」

やはり緊張が走る。

「どうしたの?」

「べ、別になんでもない」

焦っている砂亜羅を飛鳥は不思議そうに見つめていた。

その日から砂亜羅たちは、砂亜羅がどうなると吸血鬼になるのかを調べ始めた。

しかし、それを調べるためには、砂亜羅を何度か吸血鬼にしなくてはならなかった。

そこで剛の考えた事は、人間に良く似ている人形か何かを作ろうとの事だった。もちろん、砂亜羅には内緒で。

そして、男二人が裁縫道具を片手に作り始めた。

だが、できない事ぐらいは明らかだった。

「なぁ、やっぱり人形には無理があるんじゃないか?」

疲れきって敦史が言った。

「そうかも……」

剛も同感しているようだ。

「どうする?」

「どうしようか。でもさ、人形でもそう長くはもたないぜ」

剛は続けた。

「だったらさ、なんかこう……人間と間違えて襲った時、驚いて元に戻ってしまうようなのってないのかな?」

「……」

そして、しばらく黙ったままだった二人は、はっとしたように叫んだ。

「風船だ!」

こうして、砂亜羅が吸血鬼になっても大丈夫なことを気付かれないようにして、調べ始めた。

すると、吸血鬼になった砂亜羅は、見事に風船に驚いて元に戻ったのだった。

それから、何度か同じ……でもない方法で試していると、砂亜羅が一人でいる時、何かの衝撃で吸血鬼になり、人を襲うことがわかった。

その事に気付くまでの間、砂亜羅の態度がおかしかったのは、飛鳥にあまりいい感情は持たせなかった。

砂亜羅ちゃん、最近冷たいよ。どうしちゃったの?」

砂亜羅は、飛鳥の言葉に一瞬ドキッとした。

もう隠しきれない、そう思った砂亜羅は、飛鳥を家に呼んだ。

家に帰ると、いつものように敦史が来ていた。

「入って……」

飛鳥は、いつもと違う砂亜羅に、しどろもどろになりながら、「え? う、うん。お邪魔します」

と、言うことしかできなかった。

砂亜羅は、階段を上がり、剛の部屋をノックもなしに入った。

剛たちは、びっくりして振り向き、砂亜羅の顔をみて、ついにきたか……とすぐに悟った。

飛鳥は、わけがわからず、とりあえず砂亜羅を追い、剛の部屋に入ってドアを閉めた。

砂亜羅ちゃん、どうしたの? 話って何?」

立ったままの飛鳥が言った。

そんな飛鳥に、砂亜羅は単刀直入に、「私……吸血鬼なの」

と、言った。

あまりに急な事で、飛鳥はしばらく止まっていた。

そして飛鳥は、

「本当なの?」

と、聞いてきた。

「うん。もう確認済み。……嫌ってもいいよ。人殺しの友達なんで嫌でしょ?」

砂亜羅は、飛鳥から目を逸らした。飛鳥はしばし黙っていたが、下を向き小声で、

「……わけな……じゃない」

そして、砂亜羅を見て、

「いいわけないじゃない!」

と、叫んだ。

「何でそんな事言うの? そりゃあ最初は驚くけど、でも吸血鬼の前に私たち友達じゃないの? ちゃんと悩みがあるなら言ってよね!」

大粒の涙をぼろぼろとこぼしながら飛鳥は言って砂亜羅に抱きついた。

砂亜羅も泣きながら、

「ごめん……。ごめんね、風上。ごめんね……」

砂亜羅は、飛鳥を強く抱きしめながら謝っていた。

全てのいきさつを話し終わると、日はもう落ちて、街のネオンが闇に光りを灯していた。

——他にはいない私の理解者——