第十幕 飛鳥は壊れた?

家に三人は、作戦会議——と言ったら大袈裟かもしれないが、集まっていた。

「どうしよう」

飛鳥が言った。

「とりあえず、剛の事も踏まえてどうして吸血鬼になったのか考えてみるべきだよな」

「うーん」

敦史の言葉に、砂亜羅はうなってしまった。

「あー!」

急に、砂亜羅が叫んだ。

「今日、旅行に行ったお母さんたちが帰ってくるんだった」

「そういえば、最近いつ来ても見ないと思ってたんだ。旅行中だったのか……」

「じゃぁ、砂亜羅ちゃんのお兄ちゃんの事、なんて言うの?」

飛鳥が言った。

——プルルルル……プルルルル……。

まぁ、音は何でもいいのだが、電話が鳴った。

「あ、電話。ちょっと待ってて」

そう言って、砂亜羅は部屋を出た。

「はい、です。——あ、お母さん。え? 帰り延ばすの? わかった。うん、そう言っとく。うん。じゃあね」

電話を切った砂亜羅は、大きく息をついた。

「お母さんたち、もう少し向こうにいるって」

と、呆気に取られたように言った。

「じゃあ、今日はここまでにして帰ろうかな」

飛鳥が言いながら立ち上がった。

「え? もう帰るの?」

砂亜羅が時計を見て言った。だが、時計はもう七時半を過ぎている。

「うん、ちょっとね。……あ、そうそう。桜田君、今日は泊まっていってあげてね」

砂亜羅は驚いて飛鳥の肩をつかんだ。

「なっ! なんで?」

「だって、夜は一人なんでしょ? 誰もいなかったら吸血鬼になっちゃうかもよ?」

——たしかに……。と、砂亜羅は言い返すことができなかった。

「桜田君、添い寝はいいけどそれ以上はダメだよ」

「ばか。いくらなんでもそれは……ねぇ?」

答えたのは、砂亜羅だった。

「ま、恋人同士だもんね。好きにしちゃって。バイバーイ」

そんなセリフを残して、飛鳥は部屋を出て行った。

取り残された敦史が、「何か最近の飛鳥ちゃんって、ちょっとキャラ変わった?」

と、砂亜羅に聞いた。砂亜羅もそんな気がしていて、曖昧に笑った。

それから、砂亜羅と敦史は、目が合う度に、背を向けて赤くなっているのだった。

「あーあ。いいなぁ、砂亜羅ちゃんたちは。私も彼氏ほしいなぁ……」

家を出た飛鳥が空に向かって吐いた。でも、これは独り言なので誰も返事を返すはずがない。

それでも飛鳥は、

「もう結構暗いなぁ。よし、M街道を通って帰ろう。あっちの方が明るいしね」

と、めげずに独り言を続けた。

車が前から横を通過していく。一台、二台……すると、猛スピードで走ってくる車が見えた。

「うわぁ、結構速そう……。——え?」

驚くのも束の間、その車はそのまま飛鳥に突っ込んできた。

——バンッ!

声を出す間もまく、飛鳥は空高く吹っ飛んだ。