第十一幕 二人ずつ、別々の場所で

砂亜羅は台所に立っていた。

「はい、桜田君」

作ったのは、どうでもいいけど一応スパゲティだ。

「おぉ、美味そう。いただきます」

敦史は、本当に美味しそうに食べていた。

「美味しい?」

と、砂亜羅が聞いたら、

「おぅ! 毒を食らわば皿まで——」

——バンッ……

「それ、どういう意味?」

と、返しつつも食べ続けているのだから。

砂亜羅と敦史が順番に風呂に入ってから、リビングでくつろいでいると、電話が鳴り出した。

「はい、です」

電話に出た砂亜羅が言った。

「あ、砂亜羅ちゃん? あの、風上ですけれども——」

声は飛鳥のお母さんだった。

「どうしたんですか?」

「飛鳥、まだそちらにお邪魔してますかしら?」

「風上なら二、三時間前に帰りましたよ」

どうやら飛鳥が帰ってないらしい。一体どうしたんだろう……そう砂亜羅は思っていた。

「あら、そんなに前に。……どうしたのかしら」

いつもはおっとりした飛鳥のお母さんが、心配に声を曇らせる。

「あっ、ちょっとごめんね。キャッチが……飛鳥かも」

飛鳥のお母さんは、そう言うと電話に出た。

「はい、風上です。飛鳥?」

「あ、私、中央警察署のものですが、風上飛鳥さんはそちらのお子さんでいらっしゃいますか?」

飛鳥のお母さんは、一瞬何かを悟ったようにギクッとした。

「え? あ、はい」

警察の人は、申し訳なさそうに、

「実は……——」

と、話を始めた。

その時、砂亜羅たちのところでは、

「誰から?」

「風上のお母さん。風上、まだ帰ってないんだって。どうしたんだろう」

と、話していた。

すると、「もしもし……」

と、飛鳥のお母さんが泣きながら電話に出た。

「えっ? ど、どうしたんですか?」

砂亜羅はびっくりした。

どうしたらいいのかわからずおどおどしていると、飛鳥のお母さんは、

「飛鳥が……中央病院で……死んだって、連絡が……あの子が……車に…………」

——ブツンッ!

それきり、電話は切れてしまった。

砂亜羅は、次第に目から涙が溢れてきた。

耳に当てていた受話器をゆっくりと下ろして、急に力が抜けたようにガクッとしゃがみ込んだ。

砂亜羅! どうしたんだ?」

敦史が砂亜羅の側に来て言った。

砂亜羅は敦史の耳元で、飛鳥が死んだ事を告げると敦史の胸で泣き喚くのだった。

その頃、剛はただ進んでいくテレビの画面を一人で見つめていた。

すると、

——ドサッ!

と、後ろで音がした。

剛がびっくりして振り向くと、そこには飛鳥が倒れていた。

「あ、飛鳥ちゃん!」

剛が飛鳥の肩を揺すると、飛鳥はゆっくりと目を覚まして、その後ゴンッ! と壁に頭をぶつけた。

「いたた……」

頭を抱えて飛鳥が起き上がると、もう一度剛を見て、「ここ……天国?」

「飛鳥ちゃん、今から話すことは、今のところ真実だからちゃんと聞いてくれ」

剛は続けた。「俺達は、ゲームの中にいたんだと思う。だから、飛鳥ちゃんは向こうでは死んだ人間、だけどこっちではただゲームオーバーなだけだから、とりあえず天国じゃない。何とかして砂亜羅と敦史を助け出す方法を探して欲しい」

飛鳥は多少混乱しているものの、頷いた。

「俺達はゲームの操作はできない。何か手がかりを——」

「とりあえず、ゲームを買ったお店で聞いてみようよ」

「そうだな……。飛鳥ちゃんはここに残ってくれ。何か進展があったら連絡して欲しい」

剛はそういい残して、急いで店に向かった。

「いらっしゃいませー」

と、かわいい店員さんが顔を覗かせた。

「すみません。あの、ここに男の店員さんっていますか? 少し太めの……」

「この店は私一人だけど」

と、答えた。

「そんなはずは——」

「ちょっとすみません」

購入客じゃないことがわかると、店員さんは後ろに並んだ青年から商品を受け取って会計を始めた。

剛は収穫がないとわかると、店を出た。

すると、

「ちょっと待って!」

と、さっきの店員さんが、店を出てきた。

「もしかしたら、臨時で一日だけいたスタッフが男だったはずよ」

剛はその男の情報を聞くと、急いで家に帰った。

飛鳥に言って、その住所の場所に着くと、既に引っ越した後であることを知らされた。

がっくりと肩を落として家に帰ってきた二人は、「あーあ……」

と、ため息をつくのだった。